通訳案内士がもっと活躍していくには

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通訳案内士は難関なのに「食えない資格」

私は2014年度の通訳案内士一次試験に合格し、2015年度の二次試験に合格して、晴れて通訳案内士となることができました。

この試験は語学系で唯一の国家資格であり、難易度も高く何年越しに受験する方も多くいらっしゃると言われています。

が、この通訳案内士に関して一般に言われているのは「食えない資格」。

通訳案内士になったとしても、それ「だけ」で収入を得ていくことが実に難しい資格になっているのです。

少し古い資料になりますが、観光庁の資料があります。

平成26年「通訳案内士の就業実態等について」

https://www.mlit.go.jp/common/001066340.pdf

この資料によりますと、通訳案内士資格保持者の75%は資格を活かして就業しておらず

していたとしても兼業がほとんどで、専業はたったの6%です。

その理由は「一定の収入が見込まれない」ためで、半数は年収200万円以下、となっています。

国家資格にも関わらず、そして試験準備にかなりの時間と場合によっては金銭的負担を強いられるにも関わらず、合格したとしてもそれを仕事にできない。

この資料は平成26年ですから2014年のデータですが、この現状は現在もほぼ変わっていないと思います。

試験に合格する=ガイドができるわけではない

通常、通訳案内士はほとんどがフリーランスで、会社に属している人はほとんどいません。自分で旅行会社やエージェントに売り込みに行かなければ仕事はやってきません。

私の周りのほとんどの合格者は、試験に受かった後、国内にいくつかある通訳案内士団体に幾らかの年会費を払って所属し、春頃に行われる「新人研修」に参加する道を選んでいました。

通訳案内士団体に所属していれば仕事を斡旋してもらえる場合もありますが、それには数万円かかる「新人研修」の受講が必須で、そこからやっとデビューできるといった感じでした。

それに加えて各種研修もあります。都内の有数の観光スポット、築地、浅草、原宿、それに鎌倉・・・

そして、もしそれが文化体験であれば(例えば茶道や寿司作り、着付けなど)自分がその体験の講師になるために、研修を受けるところからスタート。

茶道の初級をクリアしたらアシスタントになれ、中級、上級と合格すれば、外国人相手に茶道体験の講師ができるようになる、と言った感じです。

もちろん自分にそう言ったスキルや知識がなければ最初からそんな体験を提供できる筈はないので、まずは習うところから始めるのは当たり前なのかもしれません。

ですが、新人研修からの流れから見ていただけるとわかるように、本格的に通訳案内士としてデビューするには、試験に合格した後もお金をかけて様々な研修などを受講する必要がありもしそれらの研修をクリアしたとしても、実際のガイドの案件にアサインできるかどうかはかなり狭き門なのです。

鎌倉での研修の模様

登録ガイドの数に対して案件がそんなに多くなく、さらにその案件にアサインできるのは経験者から優先されると言うことを考えると、研修をクリアした未経験者はともかく、そもそも研修を受けていないとその土俵にも登れず、さらにデビューが遠のいていくことになります。

中にはそう言った研修にたくさん参加することが目的になってしまっていて、一向に通訳案内士としてデビューするに至らない方もいらっしゃいました。

難解で実用性のない試験内容

通訳案内士の試験は、とても難易度が高いことで知られています。

自分の専門の言語に加えて日本の歴史、地理、一般常識。昨年からは実務も加わりました。出題範囲が決まっているわけではなく、広く深い知識を求められ、試験対策はとても大変です。

試験内容も、「まるで重箱の隅をつつくような問題だ!」と毎年批判が出るくらい難解で、今年(2019年)の歴史の試験は、特に難問だったようです。

このことからわかるように、通訳案内士の試験は知識詰め込み型で、「必要以上に難解だ」と言うことです。

もちろん、知識をつけること自体はとても重要です。私も通訳案内士試験を通じて得た知識は本当にたくさんあり、決して無駄にはなっていないと思います。そしてそれが実際のガイドに役立っていることがあるのも事実です。

しかし、通訳案内士の実際の仕事というのは人と人とのコミュニケーションによって成り立つものです。机に座って知識を詰め込んでいるだけではわからないことが沢山あります。

例えば、時に通訳案内士の仕事は添乗員のようでもあり、その日のツアーの周り方や工程のチェック、時間の管理、飲食店選び、さらには外国人のみが使えるジャパンレールパスや空港リムジンバスのチケットなど、知っておかなければいけない事やリサーチが必要なことも沢山あります。

こう言った、実際の通訳案内士の業務に関する実際の部分に関しては、通訳案内士試験ではほとんどカバーされない、という事です。

京都の祇園でのガイド

こう言った議論は、もう何年も前からいろんなところでされていると思うのですが、通訳案内士法が改正された昨年からも、試験の出題方式や内容はほとんど変わっていないようです。

このままでは、試験受験者には多大な時間的、金銭的な負担がかかる割には実用性がなく、せっかく資格が取れたとしてもほとんどの人にとっては宝のもちぐされになってしまい兼ねません。それは、とても残念な事ではないでしょうか。

通訳案内士法の改正

上でも少し言及しましたが、2018年1月に通訳案内士法が改正され、通訳案内士資格を持っていない人でも有償でガイドができるようになりました。それまでは通訳案内士資格を持っている人のみに許されていたガイド業務が、誰にでもできるようになったのです。

背景には、急増する訪日外国人観光客にあると思います。

2010年には860万人だった訪日外国人の数は、2018年には3千万人を超え、今年は3千500万人を超える予想です。

そのために、無資格のガイドでも活動できるように規制を緩めたのだと思います。

しかし、上記に挙げたように、資格を持ちながらも活かせていなかった75%の通訳案内士の力をもっと活用するという方向には働きませんでした。

 

ただ、私自身は規制緩和に反対をしているわけではありません。色んな場面で様々な人材が必要になり、インバウンド業界が活性化されればそれで良いのでは、とも思うのです。英語以外のガイドが足りていないという事実もあります。

しかし、一部ではガイドの質がとても落ちてしまった、という声を聞くこともあります。やはり語学が達者なだけではやっていけないのが通訳ガイド。通訳案内士の豊富な知識は重宝されるのです。

旅行会社などが通訳ガイドとして人材を募集しているのをたまに見かけますが、有資格者と無資格者では報酬に差が設けられていました。

ただ、誰でもできるようになったことで希望者が殺到し、飽和状態で、最初のうちは「ミート&グリート」と呼ばれるような空港でのお出迎えとホテルの送迎といった業務を任されることが多く、その仕事も多くは回ってこない、と聞きました。

 

これから通訳案内士をどうしていくべきなのか

「どうしていくべきなのか」などと大それたことをいう立場にはありませんが、3つほど思うことはあります。

  • 通訳案内士試験自体の見直し
  • 資格の有無にかかわらず、ガイドのイロハを学べる環境作り
  • ガイドがまっとうな金額で報酬を得られる機会を作ること

まず1つは、上に挙げた通り通訳案内士試験自体がもっと実際に即したものになり、試験ではなく、「養成」というくらいの位置付けになればいいな、ということ。

合格した時点で少なくとも「新人研修」など受ける必要もなく、即戦力になっているのが理想だと思います。

 

2つ目は、ガイドになりたい人が学べる場所作りです。

私のTwitterのアカウントで以下のようなことを呟きました。

通訳案内士になるとまではいかなくても、ガイドをやりたい!となった時に、どこでその知識ややり方を学べばいいのでしょうか。「通訳案内士試験対策」ではなくて、「ガイド養成」をするような機会や場所が、現状あまりない気がしています。

 

3つ目は、適正な価格で働ける機会を、もっと公的機関からも積極的に作り出して欲しいなと思います。

上記の観光庁のデータのように、現在でも75%近くの通訳案内士が仕事に就ける機会がないとして、それに加えて無資格の人でもガイドに立候補したら、相場が下がっていってしまうのではないかということが心配です。

資格を取ったらすぐにガイドとして働けるように、ガイドになるための勉強をしたらすぐに活躍できるように、そしてそれが収入の柱になっていくくらいでないと膨大な知識と体力を要するこの仕事に見合いません。

2020年はオリンピックだと盛り上がっている最中ですが、ゲストをお出迎えする肝心のガイドが喜んで働ける状況でないと、おもてなしもホスピタリティも何もありませんよね。 

今はネットで仕事を作り出せる時代で、様々なマッチングサービスなど登場しているとは言え、まだまだ仕事を受ける間口が狭すぎます。

もっと多くのガイドの人に仕事が行き渡るように、そしてそのためには自信を持ってガイドをできるようにきちんと練習・学べる場を設けることが必要だと思っています。

 

私自身はこの資格を取得してとても良かったと思っていますし、何よりも「通訳案内士」というだけで信頼していただけるので、その点はとてもありがたく思っていますし、試験勉強を頑張ったのが報われているなと思います。

仕事もガイドの仕事だけではなく英語コーチや英語研修、インバウンド支援など楽しくやらせていただいていますが、もうちょっと通訳案内士としての幅を広げたいなと思ってはいるところです。

私は、英語という言語ツールを使って仕事をしていくにあたって、「日本の強烈なファンを増やすこと」を目標に掲げて活動しています。日本の観光に携わる一個人として、もっと良い形でガイドが活躍していけるように、できることをやっていけたらと思っています。

ゲストと訪れた原宿Kawaii Monster Cafeにて!!

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